抄録
幼少期は絵を描く機会が多いことから色覚異常をもつ人の多くが,3色覚から見ると違和感のある色使いを指摘されるといった彩色に関するトラブルを経験している.このようなトラブルに対し,両親や保育士といった周囲の大人がいち早く対応するためにも,色覚異常をもつ人はどのような色を混同して塗ってしまう可能性があるかを知ることは重要である.本研究では,クレヨンを測色・解析し,2色覚にとってどのような色が混同色となりうるか,また,混同している色使いから色覚異常であるかどうかの判断ができるかを検討した.方法として,市販されている7銘柄のクレヨンを測色し,クレヨンのL*a*b*と,Brettelら(1997)による2色覚シミュレーションを適用したLMS錐体三刺激値からL*a*b*を算出した.さらに,CIELAB色空間におけるクレヨンの任意の色対に対し,3色覚に対する色差と2色覚に対する色差を用い,“混同色対指数”という新たな指標を導入した.その結果,混同色対指数が高い値を示すクレヨンの色対を混同して使っている場合,色覚異常である可能性を示す1つの判断材料となることが示唆された.