抄録
近年,アセアン市場の急成長に伴い,ユーザの感性にあった工業製品への設計ニーズが高まる中,我々はアセアン最大の自動車生産拠点であるタイにて,メーカと共同で自動車内外装に対する現地の人々の感性構造を分析してきた.現在は,SUV(Sport Utility Vehicle)やピックアップトラックのフロントグリルを対象に感性評価実験を実施し,感性構造を日タイで比較しようしている.実験方法として,車種の写真画像をA3写真紙に印刷したものを用意し,視覚的な印象を21対の形容詞を使ってSD法(7段階)で評価してもらった.先行実験ではタイ人61名に実施し,「カッコよさ」と「軽快さ」の二大成分から構成されることや,形状の特徴との関係性がわかった.今回は,日本人96名にも同じ実験を実施し,日タイのデータを比較した.その結果,「カッコよさ」「軽快さ」「単純さ」「力強さ」という共通の成分で構成されること,成分の順序や形容詞/車種の位置づけが日タイで異なることが確認できた.また,「力強さ」には表面色が,「軽快さ」にはデザインモジュールが影響を与えていることも確認できた.