日本色彩学会誌
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脳血流変化に基づく色の興奮・鎮静作用の検証
東 吉彦櫻井 裕司山添 崇
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2017 年 41 巻 3+ 号 p. 154-156

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抄録

 興奮・鎮静などの色の心理的作用を客観的に評価することを目的として,近赤外線分光法(NIRS)を用いて前頭部の脳血流変化を測定し,オキシヘモグロビンの濃度変化を指標として,脳(前頭葉)の活動状態を評価した.等輝度の赤・緑・青の有彩色刺激と輝度3段階の無彩色刺激を用いて,刺激の色相や輝度の違いによる影響を調べた.被験者は3色型色覚で視機能に異常の見られない20代男性8名と女性2名である.実験ではまず,被験者は脳血流測定装置と心拍計を装着した状態で,安静時の状態が5分間測定された.次にサイクルマシンを用いて一定量の有酸素運動を20分間行ったのち,赤,緑,青と灰色の一様な刺激および輝度2倍と2分の1の灰色刺激のいずれか1つの刺激を5分間観察した.これを1試行とし,6種類の各刺激に対して1試行が行われた.実験の結果,9人の被験者において,すべての刺激で運動時よりも血流の増加が認められ,特に赤や青では増加量が大きく興奮作用があることがわかった.また,無彩色では増加量が小さく,特に白色に近い刺激で最も小さかった.1人の被験者のみ全ての刺激で血流が減少したが,鎮静作用と判断するには至らなかった.

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