2017 年 41 巻 3+ 号 p. 16-19
近年,歯科治療において患者の口腔内の審美性に対する要求が高まり,特に前歯部においては,より天然歯に近似した色調・光透過性を有する治療が求められている. これまで,定性的・経験による評価として天然歯や歯冠修復材料の色調の観察などの研究が行われてきた.しかし,定量的な評価としてどのような機序で天然歯や歯冠修復材料が色調を発現しているのかを解析した研究はこれまでなされていない. そのため,光の入射・反射・吸収・散乱などに対する経路や量,またその各々がどのように光学的に干渉しあうのかを定量的に分析できれば,審美歯科修復に使用する歯冠色材料に付与すべき光学特性について,極めて有益な知見を得ることができると考える. そこで本研究では光線追跡シミュレーションソフトウェアに用いるBRDF・BTDFを算出するため,歯冠補綴治療に用いる各種審美歯冠補綴材料の光学特性を,変角光度計,紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した.本実験結果は,歯科審美領域の治療において,各種歯冠色材料を用いた歯冠補綴装置の光学特性を解析するために有用であると考えられた.