抄録
本研究は,車いす利用者81名(男性43名,女性38名)を調査対象に,インターネットを介した質問紙調査を実施した.配色の異なる3種類の車いす用高視認性レインウェアの試作品と,その原型である既存製品の4種類のデザインを評価対象として,シェッフェの一対比較法(中屋の変法)を用いて目立ち感と好ましさの評価を行い,試作デザインの視覚的評価,目立ち感と好ましさ評価との関連について検討した.一対比較法の手続きにより平均評価値を求めた結果,目立ち感の平均評価値は,無色半透明の既存製品よりも3種類の試作品の方が有意に高かった.一方,好ましさの評価は個人差の影響が大きく,平均評価値にほとんど差がみられなかった.全対象者の個別評価値から4種類のデザインの目立ち感と好ましさとの相関係数を算出した結果,男性における試作品B(緑)の評価に高い相関が認められたが,それ以外には,目立ち感と好ましさの評価の間に一定の関連性はみられなかった.これらの結果から,高視認性レインウェアの高い視認効果により車いす利用者の嗜好性が損なわれることはなく,特定の配色では視認効果と嗜好性の高さの両立が可能であることが示唆された.