日本色彩学会誌
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水景画の色彩情報・形態情報と 描画者の水イメージの関係
三宅 理子髙橋 晋也森 俊夫
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2017 年 41 巻 3+ 号 p. 173-176

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抄録

 前報に引き続き,48名の中学生を対象として,「水のある風景を自由に描く」という課題画(水景画)の画像情報と描画者がもつ水イメージとの関係を検討した.今回は描画全体(原画像)の分析に的を絞り,前報と同様の画像指標値(色彩情報量,形態情報量)を求めた.30項目のSD尺度で測定された水イメージデータは因子分析にかけ,母性,豊かさ,危険という3因子を抽出した.因子ごとのイメージ得点と画像指標値の相関分析の結果,母性得点,豊かさ得点とh平均との間に負相関が得られ,さらに母性得点はC*平均,色相エントロピー,エントロピーと正相関,角二次モーメントと負相関を示した.これは,水に対して母性的で豊かなイメージをもつ者ほど絵全体を青く濃く描き,典型的には絵に占める水の面積が大きくなる傾向を示している.水に対するポジティブなイメージが,伸び伸びと水を描かせる背景要因になっているのではないかと推察された.これまで検討してきた描画者のパーソナリティとは異なり,イメージは変動する可能性があるため,今後は,描画体験による水イメージの変化についても検討していきたい.

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