日本色彩学会誌
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視覚による質感判断における低次画像特徴への依存性 —暖かさ判断は色に基づく?—
永井 岳大山田 尚純川島 祐貴山内 泰樹
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2017 年 41 巻 3+ 号 p. 28-31

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抄録

 本研究では,視覚系による複雑な画像特徴の取得を妨げるような短時間呈示される物体画像を用いた心理物理実験を行い,様々な質感属性と低次画像特徴との関連性を明らかにすることを目的とした.検討する質感属性として光沢感,暖かさ感など7種類を用いた.実験では,様々な素材でできた物体の写真に対して各質感属性に対する知覚量を計測した.この際,刺激呈示時間を実験変数とし,刺激呈示時間の短縮による質感知覚精度の劣化の大きさを定量化した.その結果,暖かさ感の知覚では他の質感属性と比較して刺激呈示時間の影響が顕著に小さく,暖かさ感の知覚は低次画像特徴に強く依存することが示唆された.続いて,暖かさ感知覚と低次画像特徴の関連性をさらに明らかにするため,a. 暖かさ感知覚と画像統計量の相関解析,b. 特定の低次画像特徴を欠落させた画像に対する暖かさ感知覚の測定,を行った.その結果,暖かさ感知覚は物体の平均色度と強く相関するものの,色情報がなくても他の情報に基づき安定して応答が可能であった.これらの結果から,複数の低次画像特徴を手がかりとして相補的に用いることで暖かさ感が安定して知覚される可能性が示された.

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