2017 年 41 巻 6+ 号 p. 3-6
色を情報伝達手段として用いる際,その配色は正常3色覚を前提としている場合が多いが,2色覚においても弁別可能な配色であるかを正しく知ることは重要である.2色覚の色の見えモデルとしてよく用いられるものに,Brettelらのモデルがある.吉澤らは,Brettelらのモデルに色順応過程を加えたモデルを提案した.彼らは異なる照明下で大きな色差をもつ複数の色票を測色し,それらについてBrettelらのモデルと吉澤らのモデルを用いて2色覚の色の見えでの色差を求める実験を行い,後者の優位性を示した.筆者らは以前,人が見分けられる色の限界(色弁別閾)について心理物理学的実験を行い,両モデルの色弁別閾に関する正確性を検討した.この実験ではディスプレイの色温度を6,500Kとし,両モデルから計算される色弁別閾について相関係数により比較したところ,両モデルに有意な差はみられなかった.しかし,異なる条件では差異が生じる可能性がある.今回は印刷物取扱い時に推奨されているディスプレイの色温度である5,000Kにて両モデルの比較検討を行った.実験結果より,今回の実験条件でも両モデルに有意な差はみられなかった.