2018 年 42 巻 2 号 p. 50-
肌の色は,年齢・健康状態・顔印象などの判断に関わる重要な要素であり,その知覚特性を明らかにすることは非常に重要である.先行研究で,人は肌の赤みの変化に対して高い感度を示すという特性や,赤みがかった肌の方がより明るく見えるといった特性が報告されている.これらのことから,人は肌を認識した上で,肌特有の色知覚をしている可能性が考えられる.そこで本研究では,特に肌色の色分布と色弁別の関係性に注目した.日本人女性694名の肌を測定して得られたCIELAB値に対して主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分によって構成される肌色特有の色平面を構築した.そして,肌画像と肌色単色画像をその平面上の8方向に変調し,肌色の弁別閾値を調べた.また,その変調方向と肌の色の主な色素成分であるメラニン・ヘモグロビン量の変化との対応関係を調べた.実験の結果,人はヘモグロビンの増加に伴う色変化に対して弁別能が高い可能性が示唆された.