日本色彩学会誌
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蒙古斑および静脈の測色事例報告:静脈錯視の理解のために
酒井 英樹
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2018 年 42 巻 2 号 p. 59-

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抄録

 赤い血が流れているにも拘わらず,肌表面で静脈が青く見えるという現象は,色の不思議として,定期的に新聞や科学雑誌の読者質問で取り上げられる“よくある質問”である.しかし,その回答は2つに分かれており,実際(物理的)には青くはなく,青く見えるのは錯視である(錯視説)というものと,実際(物理的)に青くなっており,その理由は短波長である青色光は皮膚内部で散乱されやすいからだ(散乱光説)というものとがある.本稿では,どちらの説が正しいかを調べることを目的に,腕の静脈,及び(同じく青く見える)蒙古斑の分光測色を行った.その結果,腕の静脈,蒙古斑とも,物理的には青くはなく,黄赤であった.ただし,周辺の皮膚色に比べて,明度,彩度とも低下していた.この結果は,錯視説を支持するものであり,青く見えるのは,明るく鮮やかな周辺の皮膚との色対比などの心理効果によって,反対色である青が知覚されるためと考えられる.ただし,その錯視量についての評価は行っておらず,錯視の詳しいメカニズムについては,今後検証が必要である.

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© 2018 一般社団法人 日本色彩学会
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