日本色彩学会誌
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42 巻, 2 号
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  • 濱田 一輝, 溝上 陽子, 菊地 久美子, 矢口 博久, 相津 佳永
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 42 巻 2 号 p. 50-
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/09
    ジャーナル フリー

     肌の色は,年齢・健康状態・顔印象などの判断に関わる重要な要素であり,その知覚特性を明らかにすることは非常に重要である.先行研究で,人は肌の赤みの変化に対して高い感度を示すという特性や,赤みがかった肌の方がより明るく見えるといった特性が報告されている.これらのことから,人は肌を認識した上で,肌特有の色知覚をしている可能性が考えられる.そこで本研究では,特に肌色の色分布と色弁別の関係性に注目した.日本人女性694名の肌を測定して得られたCIELAB値に対して主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分によって構成される肌色特有の色平面を構築した.そして,肌画像と肌色単色画像をその平面上の8方向に変調し,肌色の弁別閾値を調べた.また,その変調方向と肌の色の主な色素成分であるメラニン・ヘモグロビン量の変化との対応関係を調べた.実験の結果,人はヘモグロビンの増加に伴う色変化に対して弁別能が高い可能性が示唆された.

  • 酒井 英樹
    原稿種別: 研究資料
    2018 年 42 巻 2 号 p. 59-
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/09
    ジャーナル フリー

     赤い血が流れているにも拘わらず,肌表面で静脈が青く見えるという現象は,色の不思議として,定期的に新聞や科学雑誌の読者質問で取り上げられる“よくある質問”である.しかし,その回答は2つに分かれており,実際(物理的)には青くはなく,青く見えるのは錯視である(錯視説)というものと,実際(物理的)に青くなっており,その理由は短波長である青色光は皮膚内部で散乱されやすいからだ(散乱光説)というものとがある.本稿では,どちらの説が正しいかを調べることを目的に,腕の静脈,及び(同じく青く見える)蒙古斑の分光測色を行った.その結果,腕の静脈,蒙古斑とも,物理的には青くはなく,黄赤であった.ただし,周辺の皮膚色に比べて,明度,彩度とも低下していた.この結果は,錯視説を支持するものであり,青く見えるのは,明るく鮮やかな周辺の皮膚との色対比などの心理効果によって,反対色である青が知覚されるためと考えられる.ただし,その錯視量についての評価は行っておらず,錯視の詳しいメカニズムについては,今後検証が必要である.

  • 五十嵐 崇訓
    原稿種別: 解説論文
    2018 年 42 巻 2 号 p. 65-
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/06/09
    ジャーナル フリー

     肌は,人間にとって最も“目にする”身近な認識対象の一つである.そのため,肌の外観(アピアランス)は,学術・産業分野における重要な研究の対象として研究が進められている.この際,肌のアピアランスの特徴を決定する重要な因子の一つである“色”は,不可欠な評価対象である.そのため,肌の色彩を理解する上で有用となる様々な観点からの研究が展開されている.本報では,このような多岐にわたる研究分野の中から,肌色とその周辺に関する基礎知見として三つの観点から先行研究をレビューする.まず,肌色に関する一般的な評価知見として,(1)データベースに基づいた肌色特徴に関する最近の研究を振り返る.次に,しばしば肌色の理解において必要となる生理学的観点からの評価知見として,(2)分光データや画像データなどから肌の主要色素(メラニンとヘモグロビン)を定量化・指標化するための解析法の事例をレビューする.最後に,これらの評価では捉えづらいと考えられる肌特有の評価知見として,(3)肌・顔に特徴的な知覚を扱った最近の研究事例の一端を振り返る.

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