2018 年 42 巻 3+ 号 p. 134-
Web上のアンケート機能を利用し,日本,韓国,台湾の調査協力者に抽象的な色彩嗜好およびプロダクトの色彩嗜好について回答してもらった.調査では,各国40名以上の協力者が,抽象的画像と10種類のプロダクト画像をそれぞれ20種類の色彩に変化させた220枚の画像について好ましさを5段階で評定している.国別に評定平均値を算出して主成分分析を実施すると共に,3国の評定平均値を比較した.第1主成分の固有値が69%を占めるなど好みの共通性が大きいこと,白・黒・灰が好まれ緑・紫・黄・橙などの高彩度色が好まれないこと,色の好みの差異は赤・青も目立ったが,水色・ピンクなどの高明度・低彩度色,茶・カーキなどの鈍い色など,主にトーンと関連したグループとして捉えられることなどが明らかとなった.また,抽象的な色彩嗜好の違いがプロダクトの色彩嗜好に結びつくのは一部の国の一部のプロダクトに限られるという結果が出た.これは,抽象的な色の好みをベースにしたプロダクトの色彩嗜好の説明とは異なるモデルの必要性を示唆している.