日本色彩学会誌
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日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集
照明が演出する絵画の印象
西川 恵北岡 明佳
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キーワード: 照度, 色温度, 絵画, 印象評価
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2019 年 43 巻 3+ 号 p. 30-

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抄録

現在,美術館・博物館の展示では資料保存の観点から照度が50lx,150lxの照明が推奨されるが,日常生活照明が1000lx前後であることから,多くの展示で比較的暗い照明が用いられているといえる.しかし,作品の印象の観点からは遠藤(1979)が照度は高いほど絵画はより美しい,快い,動的な等と評価され,また,照明の色温度は絵画評価への効果は小さいとした.本研究では,照度と色温度による絵画の印象変化を検討することを目的に,遠藤(1979)より実際の展示に近い環境で実験を行い,絵画の美しさ,快さ等に加え,恐ろしさ,不気味さ等も検討した.本研究の結果から,遠藤(1979)でも示された美しい,快い,動的な評価に加え,好きな,安心する,興奮した,暖かい,うれしい評価が1350lx照明下で50lx,150lxより評価が高くなるとわかった.また,5000lx照明下では美しい絵画は明るいほどより美しく感じられる可能性が示唆されたが,今後より正確な検証が必要である.また,本研究でも美しさ,快さ,好ましさは色温度によって変化しなかったが,動的な,安心する等の評価は6500Kより3000Kで高くなった.絵画の恐ろしさ,不気味さ,さびしさを伝える展示ではより暗い,または,より青白い照明が印象の演出に効果的といえる.

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© 2019 一般社団法人 日本色彩学会
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