絵画画像をはじめとする色彩画像の色変化について,画面上のさまざまなスケールについての平均色差に着目し,完全正規直交系を用いることにより,画面上の大きさについて重複することなく,かつ,取りこぼすことがないような方法を構成した.さらに,使用する基底として画面上の色変化に適応した階段関数系を定義することにより,Haar-waveletと比して,色変化の特徴をより明確に捉えられる方法を提案した.これまでは明暗や彩度,a*値,b*値といった色成分ごとに階段関数系により展開した係数のパワースペクトルや統計量から特徴をとらえようとしてきたが,本発表では,展開係数の成すベクトルから画面上の色変化の特徴分析を試みる.例えば,画面上隣接する展開係数ベクトルの内積から「直交する色変化」や「色差空間上で類似の色変化」というような関係を見出すことが可能であり,このような関係から画面上の色の配置(隣接関係)を保存した分析方法を構成することができる.これまでに分析を試みてきたモネ,ゴッホ等80点の絵画作品について,提案方法により,絵画画像における作家の「個性」を計量的にとらえるかを検討する.