日本色彩学会誌
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日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集
日本文化における紅白の意味―日本の色彩文化の特質―
吉村 耕治山田 有子
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2019 年 43 巻 3+ 号 p. 47-

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抄録

紅の訓読み「くれなゐ」は,「呉(くれ)」という国の「藍(あゐ)」(藍は染料の総称)の意で,中国から渡来した染料を意味する.紅は,紅花の汁で染めた赤色,つまり,鮮明な赤色を意味し,藍色ではない.中国では赤色が「めでたい色」として有名であるが,「紅白」という表現には特に「めでたい」という意味はなく,「吉事と凶事」を意味する.日本では古くから,日常(ケ)と非日常(ハレ)を区別する感性が見られ,紅白は中心の意味としてハレ(非日常)を象徴していることが多い.紅白の梅が,草木がよみがえる陰暦二月に咲くことにより「めでたさ」に繋がったという考えや,赤と白は天上界の色とする考えが,紅白のめでたさに繋がっている.紅白の意味と用法は,祝い事・めでたさが中心的意味の場合と,「対向する二つの配色」が中心的意味の場合の二種類に大別できる.「めでたさ」を表す場合には,必ず「紅白」が用いられるが,「対向する二つの配色」が中心的意味の場合は,赤白が用いられることがある.「紅白」の「紅」には,本来の「紅」だけでなく,「赤」の意味の場合もある.この意味の豊かさ・精神性と多義性に,日本語の色彩語の特性が反映されている.

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© 2019 一般社団法人 日本色彩学会
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