2020 年 44 巻 3+ 号 p. 13-
LED照明光源の特徴として多峰性の分光分布を持つことが挙げられる.多峰性分光分布の光源は物体色を色鮮やかに演色し,省エネルギーの照明光源として有効である.一方,人は異なる色の照明下でも物体表面の色を一定に知覚する(色恒常性)特性をもつ.本研究では,2種類の色温度(A光源・D65光源)それぞれに対して分光分布の異なる4種類の計8種類の照明光のもとで22種類の色票の色の見えの評価を行い,光源の分光強度分布が色恒常性に与える影響を調査した.分光強度分布は,ピーク波長をずらした三峰性分光分布(MP)3種類と広帯域分光分布(BB)の4種類であった.色の見えの評価には重み付けカテゴリカル比率評価法を用いた.異なる色温度の照明下での色の見え評価の比較から,ピーク波長が同じ照明間であれば色恒常性は高いこと,ただしどちらか一方が短波長寄りのピーク波長を有する三峰性分光分布の照明の場合は,赤付近の色の彩度が下がり,色恒常性が著しく低下することが示された.また,同一色温度の照明下での色の見え評価を比較したところ,低色温度のA光源下では,光源の分光分布の影響を受けて色相や彩度が大きく変化することが示された.