日本色彩学会誌
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日本色彩学会第51 回全国大会カラーポッド[京都]’20 発表論文集
照度レベルの低下と課題の実行が引き起こす空間解像力の低下
杉浦 徹篠田 博之
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2020 年 44 巻 3+ 号 p. 15-

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抄録

 目撃証言は裁判の重要な証拠として扱われるが,目撃者の視覚特性の影響を受けることは重要視されていない.冤罪や真犯人の取り逃がしを防ぐため,視覚特性に着目した目撃証言の信憑性評価指標が求められる.車の運転などの目撃と無関係なタスク実行中の目撃では,目撃者は完全に目撃に集中できず信憑性が低下する可能性がある.そこで本研究では,物体の形状や人相を正しく認識する上で重要な空間解像力が目撃への集中を妨げる二重課題の実行によりどのように変化するか検討することを目的に実験を行った.被験者のタスクは,標的追従課題と方向弁別課題からなる二重課題の実行(追従あり条件),または方向弁別課題のみ(課題実行による影響を見るための統制条件;追従なし条件)の実行である.標的追従課題では,被験者はマウスを使用し“∞”型の 軌道上を移動する円形ターゲットの追従を行った.方向弁別課題では,ランドルト環の切り欠きの向きの判別を行った.照度レベルの低下によって正答率と確信度はともに低下した.追従課題の有無で比較すると,追従あり条件での正答率は追従なし条件に比べて低く,追従課題の実行によって空間解像力が低下したことが示された.

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© 2020 一般社団法人 日本色彩学会
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