実務で色彩計画等に携わってきたが,芸術系大学で色彩に関する講座を受け持つ機会を得た.デザイン工学部と芸術学部向けで色彩の扱われ方が異なる学科の構成であるため,基礎的知識と実習のウェイトに違いを持たせて取り組んだ.芸術的,美的側面よりも生活の中での色彩のとらえ方中心の内容である.両学部向けとも経験や技術の差があまり出ないよう色紙を用いる実習を主とした.10年+ αの期間であるが,途中,必修科目となり,関心の低い受講生,大人数などの状況で試行錯誤した.基本的カラーシステム,色を見分ける力の会得,日本の色と世界の色,現在と他の時代の色の比較など,どの分野でも必要と考えてきた内容を,参加型やレポート書式の考案など,関心度を高めるように工夫した.データや映像で色彩を身近にみる時代で.誰でも色彩を扱い,プラン出来るからこそ,自分自身をサンプルにして色を探り,考察することによって,色の面白さ・可能性に気付いてほしい.そして多くの分野で色彩を活用してもらいたいと思う.色彩は,広く関心を持ってもらっているが,まだまだ使いこなせていない場面に出会うことも多いため,色彩教育に期待を込め,現状報告を行うものである.