2020 年 44 巻 3+ 号 p. 233-
メキシコの街並みは多彩なことで知られているが,一般建築の体系的な建物色彩調査はこれまで殆ど行われていない.本研究では,メキシコの各都市の街並色彩の実地調査を通して,色彩の実態及びその形成要因を明らかにし,メキシコの街路景観の色彩特性を理解することを目的とする.
本調査で対象とするメキシコ北東部のモンテレイ市歴史地区は,90年代に歓楽街として栄えた後,マフィアの抗争による治安悪化に伴い多くの店舗が撤退するなど過疎化が進んだが,近年では行政による治安改善や地域再生の取り組みが奏功し,店舗や文化施設の数が増加し賑わいが戻りつつある.それらの新たな商業建物の色彩は現在の歴史地区の街路景観に影響を与えている.
実地調査では,街路に面する建物ファサードの測色調査と,行政や住人へのヒアリング調査を行った.測色調査の結果,治安悪化前は無彩色のファサードが多いが,治安回復後は商業建物では暖色の壁面色が増加していることが分かった.ヒアリング調査では,建物用途の変遷と住人のファサード色の決定要因を明らかにし,考察を行った.