2020 年 44 巻 3+ 号 p. 47-
1型および2型2色覚は,赤緑方向に混同色を持つにもかかわらず,大きい刺激を長く観察すると,3色覚類似の色応答を示す.この現象に対し,我々は,ipRGCの寄与という仮説を検討した.装置に4原色の色表示システムを用い,LMS錐体とipRGCの刺激値を独立に変化させた.被験者は,白色LEDで照明された刺激背景となる白色の紙の開口を通して,刺激を観察した.刺激呈示時間は2秒であった.基準刺激のLMS錐体刺激値とipRGC刺激値を,周辺白色のL,M,S錐体刺激値の0.4 倍,ipRGC刺激値の0.42倍とし,L錐体とipRGC,M錐体とipRGCの刺激値コントラストを変化させ,色の見えを測定した.被験者は,緑,薄い緑,赤でも緑でもない,薄い赤,赤の5者強制選択で応答した.2型2色覚が実験に参加した.Lコントラストが上がる,またはMコントラストが下がると赤応答,その逆の条件で緑応答が得られたが,ipRGCコントラスト増減分に対しては,色応答の明確な傾向は認められなかった.このことから,我々が調べたipRGCコントラスト範囲内では,2色覚の赤-緑色応答にipRGC刺激量は寄与していないといえる.