2023 年 25 巻 1 号 p. 23-28
炎症性腸疾患は,主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2疾患を指す。これらの疾患の国内患者数は近年急増している。抗TNF-α抗体であるinfliximabは炎症性腸疾患に対して劇的な効果を示し,炎症性腸疾患の治療体系にパラダイムシフトをもたらした。そして,infliximab以降,炎症性腸疾患の治療薬開発は分子標的治療薬に完全に移行した。炎症性腸疾患の原因は不明であるが,遺伝的要因を持つ人に食事などの環境因子が影響を与え,腸内細菌叢のdysbiosisが起こり,これが腸管の免疫系を異常に活性化させ,慢性炎症を引き起こしていると考えられている。Dysbiosisを是正し炎症性腸疾患を治療する試みとしてfecal microbiota transplantation(FMT)が注目されている。これまで複数の無作為化対照試験で潰瘍性大腸炎への有効性が示されている。ただし,投与方法,ドナー選択,投与頻度などの最適化が必要である。また,長期的な転帰や安全性に関する検証も必要である。