抄録
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に罹患していることは自動車の運転に影響を及ぼす。SAS患者が事故を起こすリスクは健常者と比較して有意に高いという。今回われわれは、運転者がSASに罹患していることと事故との因果関係が疑われた例について、運転者の刑事責任を中心に検討した。対象は15人で、運転者は全員男性であった。また、対象例の66.7%が、バスやトラックの職業運転者であった。事故発生前からSASと診断されていた運転者は2人で、ともに、事故当時は治療を受けていなかった。12人(80.0%)の運転者は、SASの影響による心神喪失状態を理由に、無罪または減刑を主張した。既決14人のうち、無罪判決が下されたのは、2人(14.3%)であった。近年、病気に起因した交通事故に対する責任追及は厳しくなっており、2013年11月には、「自動車運転死傷行為処罰法」が成立した。事故当時、SASの自覚がなくても、眠気を感じた時点での運転中止義務があると判断されることが多い。SASは、有病率が高いにもかかわらず、治療中の患者は少なく、認知度も低い。SASの病態や事故のリスク、治療効果の高さなどについて、運転者への啓発が必要であろう。また、職業運転者に対するスクリーニング検査の徹底が望まれる。