日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
13 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 外川 佑, 小林 将士, 小田 俊昌, 村山 拓也, 﨑村 陽子
    2014 年13 巻2 号 p. 3-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、臨時適性検査の受検率と年間交通事故率の調査を通じて、運転再開プログラムの有効性を検証することである。本研究では、2007年から2011年に新潟リハビリテーション病院にて自動車運転再開プログラムを実施した脳損傷者78名を対象に郵送法によるアンケート調査を行った。44名の対象者から回答が得られ、運転を辞めた13名が対象から除外され、残る31名が主な調査対象となった。アンケートの調査項目は運転状況に関する質問で構成された(例:「Q1.現在,車の運転をしていますか?」、「Q2.免許センターにて臨時適性検査を受検しましたか?」、「Q3.運転をしていない理由はなぜですか?」、「Q4.車の運転中に交通事故やヒヤリなどの危ない思いをしたことがありましたか?」、および「Q5.危ない思いをしたのはどのような状況でしたか?」など)。本研究では、Q2とQ4について解析した。Q2の臨時適性検査の受検率については、χ2検定を用いて我々の先行研究(2007)との比較を行った。臨時適性検査の受検率は我々の先行研究に比べて、有意に増加していた。年間交通事故率については、先行研究と比べると約2.6%と比較的低い傾向を示した。本研究の結果から、対象者への説明用のパンフレットおよび説明者のマニュアルの使用が臨時適性検査の受検率を増加させる可能性があることが示唆された。また、自動車運転評価や訓練およびその後の指導助言などは、年間交通事故率を減少させる可能性があることが示唆された。
  • 松村 美穂子, 中谷 祐己, 池田 志織, 百目木 希実, 一杉 正仁, 森山 俊男, 麻生 好正
    2014 年13 巻2 号 p. 10-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における自動車運転中の低血糖発作について、実態調査を行った。245名を対象としてアンケートを実施し、現状把握を行い、治療法別や自動車運転状況別での比較検討を行った。今後の課題を検討した。インスリン治療患者(1型糖尿病、2型糖尿病ともに)が、内服薬患者に比して、運転中の低血糖や低血糖による交通事故が多かった。しかし、主治医が患者の自動車運転状況を把握している率は低かった。また、毎日運転する人の方が、運転中の低血糖発作が高頻度であった。さらに、仕事でなく私用で車を運転する人の方が、運転中の低血糖の自覚や低血糖発作による交通事故が多かった。以上より、糖尿病患者に求められる自動車運転中の低血糖発作に対する注意喚起や予防策への啓発を広める必要ある。また、主治医の積極的な介入余地がまだ有ることも示唆され、更なる徹底した指導が望まれ、交通事故低減へ繋がることを啓発・教育を普及させる必要がある。
  • 本邦刑事判例における司法判断と予防対策について
    馬塲 美年子, 一杉 正仁, 相磯 貞和
    2014 年13 巻2 号 p. 18-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群(SAS)に罹患していることは自動車の運転に影響を及ぼす。SAS患者が事故を起こすリスクは健常者と比較して有意に高いという。今回われわれは、運転者がSASに罹患していることと事故との因果関係が疑われた例について、運転者の刑事責任を中心に検討した。対象は15人で、運転者は全員男性であった。また、対象例の66.7%が、バスやトラックの職業運転者であった。事故発生前からSASと診断されていた運転者は2人で、ともに、事故当時は治療を受けていなかった。12人(80.0%)の運転者は、SASの影響による心神喪失状態を理由に、無罪または減刑を主張した。既決14人のうち、無罪判決が下されたのは、2人(14.3%)であった。近年、病気に起因した交通事故に対する責任追及は厳しくなっており、2013年11月には、「自動車運転死傷行為処罰法」が成立した。事故当時、SASの自覚がなくても、眠気を感じた時点での運転中止義務があると判断されることが多い。SASは、有病率が高いにもかかわらず、治療中の患者は少なく、認知度も低い。SASの病態や事故のリスク、治療効果の高さなどについて、運転者への啓発が必要であろう。また、職業運転者に対するスクリーニング検査の徹底が望まれる。
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