日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
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スミードの法則を用いた交通事故死者数推移の一考察
アニス ファーハナ ザイヌッディン國行 浩史
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2022 年 21 巻 2 号 p. 9-22

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抄録

交通事故の要因は、人、道、車からなるさまざまな要因から発生している。また、人口増加や都市化、モータリゼーションなどの社会変化の影響も大きく受けている。R. J. Smeedは1938年の交通事故データを用いて、人口当たりの車両登録台数(N/P)と登録車両台数当たりの自動車交通事故死者数(D/P)を比較し、スミードの法則としてその関係を提唱した。また、その関係からモータリゼーションが進むと登録台数当たりの自動車交通事故死者数が減少していくことを示した。その後の研究でも交通事故の概況を把握する手法の一環として多くの研究者がスミードの法則を用いた分析を行っている 。本研究では、このスミードの法則を用いてIRTAD加盟国34カ国のデータから交通事故の年推移の考察を行った。さらに、社会的因子を用いて重回帰分析を行うことにより、交通事故死者数と社会的因子との関係を分析した。その結果、スミードの法則は総じて適用できると考えるが、近年のデータでは徐々にずれる傾向が強くなっていることがわかった。また、重回帰分析の結果から一人当たりのGDPと高齢者比率がD/Nに対して有意な因子(p<0.005)になったが、係数は共に負となり、経済成長レベルにより異なる交通環境をもった各国に対して、一律の解釈はできなかった。経済成長レベルにより交通環境や自動車利用状況の変化が考えられるため、スミードの法則のD/Nでは、とくにGDPの高い国の評価は難しく、状況に応じた国別の評価が必要であると考える。

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© 2022 一般社団法人 日本交通科学学会
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