抄録
本論文では体調検知・事故回避技術普及による疾病患者の運転への社会受容性や体調検知・事故回避技術があったにもかかわらず発生する事故に対する市民意識について一般市民に対するインターネットアンケート調査を行った。調査の仮説として、過去に自身もしくは知人が運転中に体調変化があった場合に体調検知・事故回避技術に対して肯定的になると考え、過去の体調変化の経験との関係について分析を行った。対象は50歳以上の男女とし、回答件数は1,500件である。結果として、現段階での自動車交通社会に対する認知として、急な体調変化を適切に検知し、危険回避が可能な装置が普及しても体調急変の可能性がある疾病患者の運転が社会的に受容されない可能性が示唆された。一方、自身または知人の運転中の体調変化の経験が体調検知技術への期待を高め、体調検知技術による疾病患者の運転への許容に正の影響を与えることが示された。また、一般市民の認識として、体調計測機器を付けることを条件として運転を許可されている人がそれを付け忘れた場合、運転手の責任が大きくなると考える人が全体の半数を超えており、体調変化検知を自動的に開始するなどの仕組みが必要と考える。以上より、安全運転を支援するシステムの開発と並行して、それが社会に許容される必要があり、今後社会受容性向上のための施策について検討する必要がある。