日本歯科医学教育学会雑誌
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Print ISSN : 0914-5133
研究報告
高頻度歯科治療における処置時の力のコントロールに関する研究
中村 太佐藤 拓実塩見 晶奥村 暢旦石﨑 裕子伊藤 晴江中島 貴子藤井 規孝
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2016 年 32 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

抄録 歯科医師に求められる基本的な手技要件には, 適切に器材を扱うことに加え, それぞれの処置に適した力を患者や患歯に加えることが含まれる. しかしながら, 治療時の力のコントロールの教育は困難であるため, 学生や研修歯科医にとってはこれを経験的に学習せざるをえないのが現状と思われる. そこで, 今回処置時の力のコントロールに関する教育法の基盤形成を行うことを目的として, 学生と歯科医師が処置時に患者に加える力の差を調査した. 被験者は臨床実習中の新潟大学歯学科5年生10名と臨床実習および臨床研修の指導教員を務める歯科医師10名の計20名とした. 力の計測は下顎に電子秤を取り付けたマネキンを用いて行い, 対象処置には繊細な力から比較的大きな力を要するものとして歯周ポケット検査, 歯肉圧排, 感染歯質除去, 部分床義歯装着, 全部鋳造冠装着の5種類を選択した. 得られた結果は学生群, 歯科医師群に分けて統計学的処理を行い, それぞれについて有意差の有無を検証した. 結果を比較すると, 小さな力で行う処置では学生が歯科医師より大きな力を加えており, 大きな力を要する処置ではこの反対の傾向がみられた. 今回対象とした5つのすべての処置について学生群と歯科医師群で計測された力の大きさに有意差が認められ, 歯科医師群では処置間の比較においても有意差が示された. 以上より, 治療時の力のコントロールと術者の経験は密接に関係することが示唆された.

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