日本歯科医学教育学会雑誌
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Print ISSN : 0914-5133
調査報告
歯科医師臨床研修に関するインシデントレポートの分析と対策
石﨑 裕子中島 貴子伊藤 晴江奥村 暢旦小林 哲夫魚島 勝美髙木 律男興地 隆史藤井 規孝
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2016 年 32 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

抄録 より安全な歯科医師臨床研修の運営を推進するために, 新潟大学医歯学総合病院歯科総合診療部において臨床研修歯科医が報告したインシデントを集計・分析した. 提出されたインシデントレポートを基に, 平成18年度から平成26年度までの9年間に報告された歯科医師臨床研修に関するインシデントの数, 種類, 患者影響レベル, 原因, 年度別の発生率について調査した. その結果, 研修歯科医を当事者とするインシデントは77件で, 研修歯科医のみがかかわったインシデントは71件であった. インシデントの内容では歯科治療が55件と最も多く, それらはさまざまな診療場面で発生していた. 歯科治療のなかでは軟組織損傷・火傷が26件と最も多かった. そのため患者影響レベルは3aが多かった. 原因は技術不足, 確認不足, 観察不足, 判断力不足, 知識不足などが複数影響していた. 研修歯科医1人当たりの年間インシデント発生数は0.1~0.6件で, 1診療当たりのインシデント発生率は0.03~0.43%と推計された. 調査期間内での推移を調べると, 対策として実施している事例紹介や危険予知トレーニングの工夫でインシデントの発生件数は減少傾向にあるものの, 今後も諸々の対策を継続・充実させる必要が示唆された.

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© 2016 日本歯科医学教育学会
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