2016 年 32 巻 2 号 p. 84-92
抄録 本論文では臨床実習を終了した6年次生が, 自身が1年次に受講したエスコート実習をどのように評価しているかを実習直後の評価と比較, 検討した.
1年次に実施された患者エスコート実習に対するアンケートは同一学生に2回実施された. 1回目は1年次のエスコート実習直後に, そして2回目は5年経過後の臨床実習終了時に1年次に受講したエスコート実習を振り返り, アンケートに回答した. その両方に回答した82名を対象者とした. 1回目と2回目の評価を比較, 分析した結果, 以下の結論を得た.
臨床実習終了時のエスコート実習に対する評価は, 1年次の実習直後の評価と比較して有意に低下した. エスコート実習直後にはエスコート実習を肯定的に評価していたが, 臨床実習終了時にはその評価が否定的に変化した学生は, 患者の視点の理解や医療人にふさわしいコミュニケーションの技能の理解の観点からその評価が低下していることが明らかになった. 一方, エスコート実習直後と臨床実習終了時の両方においてエスコート実習を肯定的に評価した学生においては, 医療人にふさわしいコミュニケーションの技能の理解の観点からエスコート実習が有意義であると評価していることが示された. 以上より, 学生はエスコート実習直後のほうが5年後の臨床実習終了時と比較してより肯定的にエスコート実習を評価をしていたが, 一部の学生にとっては一定の価値のある実習であることが示唆された.