2023 年 39 巻 1 号 p. 10-16
抄録 本研究では,歯科衛生士養成校を対象にHIV感染症の教育がどのようになされているか,その教育の現状を把握することを目的に質問紙調査を行った.回答の得られた養成校は165校中113校(回答率68.5%)であり,113校中HIV感染症の教育を行っていると回答したのは93校(82.3%)であった.行っている講義内容は,院内感染対策について95校(84.1%),感染力について83校(73.5%),感染後の自然経過について61校(54.0%),曝露時対応(曝露後予防内服)について41校(36.3%)であり,曝露時対応の講義を行っている養成校数は著しく少なかった.そこで,曝露後予防内服の講義が行われない要因について講義の有無で2群比較したところ,エイズ診療拠点病院に勤務している,または勤務した経験があるという講師の勤務経験の有無に有意差があった(χ2=11.928,p=0.001).
本調査の結果から,歯科衛生士養成校のHIV教育の講義内容は院内感染対策が主であり,HIV感染症に関する内容や曝露後予防内服については行われていない傾向が示された.今後,HIV感染症や曝露時対応の正しい医療知識を歯科衛生士養成課程にも積極的に取り入れる必要があると思われた.