日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
原著
ミラーテクニックを用いた切削技能に影響を与える因子の検討―第4報 上顎中切歯口蓋側切削時のフィンガーレストの位置による指導歯科医と研修歯科医の比較検討―
長澤 伶佐藤 拓実中村 太長谷川 真奈星野 みずき藤井 規孝
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2025 年 41 巻 3 号 p. 79-88

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抄録

抄録 ミラーテクニック(MT)は,目視が難しい部位の際に有能な技能であり,歯科治療をするにあたり必要不可欠な臨床技能の一つである.しかしながら,経験の浅い学修者にとってMTの技能習得は容易ではない.そこで著者らは,臨床経験の浅い歯科医師に対する効果的なMTの教育方法の開発を目指し,MT下でのう蝕の切削について第1報,第2報として報告した.前報は研修歯科医(TD)を被験者としたが,本稿では指導歯科医(ID)を対象に第2報同様の実験を行い,IDと学習者であるTDを比較することによって切削の正確性に関する熟練度を検討した.

 実験条件は,第1報,第2報に準じ,評価パラメータを過剰切削範囲,最大切削深度,平均切削深度,確認回数,切削時間とし,ID,TD間で切縁側,歯頸側,近遠心の4エリアごと,フィンガーレスト(FR)の位置ごとに比較を行った.

 結果として,過剰切削範囲,最大切削深度,平均切削深度のいずれもIDのほうがTDよりも切削技能の正確性が高かった.また,FRを上顎右側犬歯に設定した場合の確認回数がIDのほうが多いことから,切削しにくい状況下での操作は,IDのほうがより慎重に行ったことが示唆された.

 MTを用いた上顎右側中切歯のう蝕を想定した試験円の削除について,FRの位置は切削の正確性に影響を与えるが,臨床経験によりMTの熟練度は変化し,MT技能の上達によりFRに関する不具合をある程度補正することが明らかになった.

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