2003 年 53 巻 2 号 p. 103-110
近年,ハイドロキシアパタイトゾル(HAm)は,未焼結ハイドロキシアパタイト微粒子で構成された新しい生体材料として開発された.先にわれわれは,HAmは骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1のアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性を培地中の牛胎児血清(FBS)非存在下で抑制するが,FBS存在下では抑制しないことを明らかにした.そこで本研究では,HAmの生体親和性における血清アルブミン(SA)の役割を,MC3T3-E1の細胞表面に局在し,石灰化に関与するALP活性を指標に検討した.HAmはSA含有培地中にて前処理した後,HEPES緩衝液で洗浄した.HAmに吸着したSA量は,処理時間およびSA濃度の増加とともに高くなった.HAmに吸着したSAの最大量は,HAm1mg 当たり約47.6μgであった.さらに,HAmに吸着したSAはわずかに5%しか培地に遊離しなかった.未処理HAmは細胞のALP活性を抑制したが,SAで前処理したHAmはわずかなALP活性の抑制にとどまっていた.これらの結果から,SAはHAmの骨芽細胞に対する親和性を促進している可能性が示唆された.