2004 年 54 巻 5 号 p. 558-565
本研究の目的は,義歯装着による口腔内カンジダ菌数および菌種の関連を明らかにすることである.対象者は義歯装着者群89名と非装着者群197名であった.これら対象者の口腔嗽掃液中を検体とし,CHROMagar Candida^[○!R]にてカンジダ菌属の分離・培養を行った.その結果,Candida albicansの検出者率は義歯装着の有無にかかわらず高かった.また,その検出率は年齢に依存していなかった.一方,重篤な日和見感染症の原因菌であるC.tropicalisとC.glabrataの検出率は,義歯装着群において有意に高かった.これらのことから,義歯装着により口腔内のカンジダ菌種が変化すること,とりわけC.toropicalisやC.glabrataが優勢になることが明かにされた.したがって,義歯装着者に対するカンジダ菌のコントロールのためには,これまでのC.albicansに着目した方法のみならずC.tropicalisやC.glabrataにも有効な方法を考える必要性のあることが示唆された.