口腔衛生学会雑誌
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54 巻, 5 号
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論説
原著
  • 清水 紀博, 荒尾 行知, 香山 不二雄, 佐藤 勉
    2004 年 54 巻 5 号 p. 528-538
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    成人歯肉由来および歯根膜由来線維芽細胞におけるカドミウム(Cd)とリポ多糖(LPS)による炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,IL-8)およびプロスタグランジンE_2(PGE_2)の放出に関して検討した.あわせて,喫煙者および非喫煙者における刺激唾液中のCd濃度を測定し,喫煙によるそれらの影響を検討した.Cdの48時間作用時でIL-6,IL-8およびPGE_2濃度は,両細胞ともに10^<-3>mM Cd濃度群で最も上昇した.CdとLPS混合添加の12時間作用時でIL-6およびIL-8は,成人歯肉由来線維芽細胞において10^<-8>mM Cdおよび10^<-7>mM Cd濃度と各LPS混合群で著しく上昇した.これに対し,IL-1βは,成人歯肉由来および歯根膜由来線維芽細胞において検出されなかった.また,成人歯根膜由来線維芽細胞のIL-6,IL-8およびPGE_2濃度は,成人歯肉由来線維芽細胞に比べ低値であった.さらに,刺激唾液中のCd濃度は,非喫煙者に比べ喫煙者で有意に高かった.以上より,本実験で用いた成人歯肉由来および歯根膜由来線維芽細胞は,Cd曝露によりIL-6,IL-8およびPGE_2を放出することが明らかにされ,成人歯肉由来線維芽細胞では,CdとLPS混合添加でIL-6およびIL-8の放出が増大することが示された.また,タバコ中Cdは歯周組織に影響を与えることが示唆された.
  • 合地 俊治, 田中 とも子, 佐藤 勉
    2004 年 54 巻 5 号 p. 539-549
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    口気中の揮発性硫黄化合物(VSCsと略す)濃度と舌苔中細菌数を指標に,生理的口臭に対する舌清掃と洗口剤の効果を検討した.成人男性をA〜E群(A群:口腔ケアなし,B群:毎食後,水道水にて含漱,C群:毎食後の舌清掃後,B群と同様に水道水にて含漱,D群:毎食後にグルコン酸クロルヘキシジン配合洗口剤にて含漱後,B群と同様に水道水にて含漱,E群:毎食後の舌清掃後,D群と同様に洗口剤と水道水にて含漱)に分けて実験を行った.朝食・口腔ケア後のVSCs濃度は,すべての群で実験開始時(朝食前)に比べ有意に低値であった.いずれのVSCs濃度も朝食3時間後(昼食前)の時点で再び上昇し,A群とB群ではC〜E群に比べ有意に高値であった.実験開始24時間後(翌日朝食前)のVSCs濃度は,A群とB群では実験開始時のレベルであった.C〜E群のVSCs濃度も前日の昼食前に比べやや上昇したが,A群とB群に比べ有意に低値であり(B群のメチルメルカプタンを除く),実験開始時(朝食前)と比較しても有意に低かった.舌苔中細菌については,実験開始時(朝食前)で試料あたり10^6〜10^7個の好気および嫌気性菌が検出された.実験開始後の歯数変化は,ほとんどの実験群および菌種で朝食・口腔ケア後に減少し,翌日朝食前にかけて再び増加する傾向にあった.以上のことから,口気中VSCs濃度は,朝食後の口腔ケアの有無およびその方法に関係なく低下するが,舌清掃や洗口剤の使用は,その発生を持続的に抑制することが示唆された.
  • 木林 美由紀, 大橋 健治, 森下 真行, 奥田 豊子
    2004 年 54 巻 5 号 p. 550-557
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    幼稚園・保育園に通う幼児141名(6.1±0-3歳)を対象に,チューインガム法と感圧紙法(デンタルプレスケール^[○!R])を用いて咀嚼力を評価した.さらに,保護者と担任教諭および担任保育士を対象に幼児の日常の食行動および生活行動について質問紙調査を行い,咀嚼能力との関連性について検討し,以下の結果を得た.1.単位時間当たりの溶出糖量と咬合力には,性差は認められなかった.溶出糖量は,身長との間には正の相関関係が認められた.2.対象児の摂食時における咀嚼状態の評価は,施設内の担任者と保護者との評価に異なる傾向が認められた.3.保護者による評価で,偏食の少ない対象児は,偏食が多い対象児より溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と対象児の偏食の程度は有意な関連性が認められた.4.保護者が食事を作るとき,意識して堅い物をメニューに加えている家庭の対象児は,デンタルプレスケール^[○!R]による咬合力が有意に高かった.5.担任教諭・担任保育士による評価において「友人ととてもよく遊ぶ」と評価された対象児は,ほかの対象児よりも溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と「友人と遊ぶ」項目に有意な関連性が認められた.以上の結果から,幼児の咀嚼能力は,幼児の食行動や生活行動と関連しており,幼児と保護者に対する食教育の重要性が示唆された.
  • 水谷 博幸
    2004 年 54 巻 5 号 p. 558-565
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,義歯装着による口腔内カンジダ菌数および菌種の関連を明らかにすることである.対象者は義歯装着者群89名と非装着者群197名であった.これら対象者の口腔嗽掃液中を検体とし,CHROMagar Candida^[○!R]にてカンジダ菌属の分離・培養を行った.その結果,Candida albicansの検出者率は義歯装着の有無にかかわらず高かった.また,その検出率は年齢に依存していなかった.一方,重篤な日和見感染症の原因菌であるC.tropicalisとC.glabrataの検出率は,義歯装着群において有意に高かった.これらのことから,義歯装着により口腔内のカンジダ菌種が変化すること,とりわけC.toropicalisやC.glabrataが優勢になることが明かにされた.したがって,義歯装着者に対するカンジダ菌のコントロールのためには,これまでのC.albicansに着目した方法のみならずC.tropicalisやC.glabrataにも有効な方法を考える必要性のあることが示唆された.
  • 相田 潤, 安藤 雄一, 青山 旬, 丹後 俊郎, 森田 学
    2004 年 54 巻 5 号 p. 566-576
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    これまで3歳児う蝕有病状況の地域差が報告されているが,全市町村を同時に比較した報告はなかった.地域相関研究で歯科保健水準とう蝕との関連が示されていないのも,これが一因と考えられる.また市町村単位の地域比較の際には標本誤差変動が生じやすく,解決策の1つに経験的ベイズ推定が知られている.今回1998年(3,122市町村),2000年(全3244市町村)の3歳児歯科健康診査結果を収集,う蝕有病者率の経験的ベイズ推定値による疾病地図を作成し,地域比較を行った.また重回帰分析により歯科保健水準に関する指標について,社会背景指標を調整して検討した.疾病地図から北海道,東北,四国,九州を中心に有病者率が高い傾向にあることが認められた.また重回帰分析から,「最終学歴割合(大学)」,「合計特殊出生率」,「二次産業従業者割合」,「失業率」(決定係数=0.375,偏相関係数=-0.424,0.214,-0.204,0.149)の指標の関連が強く,「保健指導受診回数」(偏相関係数=-0.067)はう蝕を減少させる方向に弱く関連していた(p<0.001).経験的ベイズ推定値の疾病地図により,3歳児う蝕有病者率の市町村単位の地域差が明確になった.また「保健指導受診回数」の高い地域で有病者率が低い傾向が弱いながらも認められた.今後,今回の地域相関研究の結果を,個人単位の研究により究明していく必要があるだろう.
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