2021 年 71 巻 2 号 p. 102-109
本研究の目的は,立案した保健指導プロトコルの有効性を検討することである.被験者は歯科医師8名とした.試験開始日に栄養・運動指導を行い,食と運動習慣の改善を図った.4週間後に口腔保健指導を行い,毎日の口腔清掃に加えてDental Drug Delivery System(以下,3DSとする)による除菌を6週間実施した.主要評価項目は,生活習慣病の代替評価項目:血圧,脈波伝播速度(以下,baPWVとする),足関節上腕血圧比(以下,ABIとする),Body Mass Index(以下,BMIとする)および体脂肪率を,副次的評価項目は,歯周組織状態,総レンサ球菌数,ミュータンスレンサ球菌数およびう蝕細菌比率(%)とした.血圧とABIの中央値は,基準値内を維持した.baPWV,BMIおよび体脂肪率の各中央値は,4週間後に一旦上昇したが,6 週間後からは減少した(p>0.05).歯周ポケット深さ(以下,PDとする)の中央値は,2 mm以下を維持し,試験最終日のプロービング時出血(以下,BOPとする)の中央値(四分位範囲)は,0.00(0.00–0.45)%であった.唾液中ミュータンスレンサ球菌数の中央値(四分位範囲)は,試験開始日:4.74(3.73–4.84)log CFU/mLから最終日:3.70(3.70–3.78)log CFU/mL と有意に減少した(p<0.01).
以上より,本研究で立案した保健指導プロトコルは,口腔と全身の健康増進に寄与する可能性が示唆された.