口腔衛生学会雑誌
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原著
後期高齢者歯科健康診査受診者の肺炎発症に関わる口腔保健関連因子の分析
曽根 一華福井 誠土井 登紀子下村 学岡本 好史松本 侯松山 美和吉岡 昌美日野出 大輔
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2024 年 74 巻 2 号 p. 116-124

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抄録

 本研究の目的は,歯科健診データを用いて,誤嚥性肺炎を含めた後期高齢者の肺炎発症に関わる口腔保健関連因子を調べることである.対象者は,平成27年からの5年間に後期高齢者歯科健診プログラムを受診した75,80,85および90歳の徳島市住民3,747名である.解析には,各対象者から得られたアンケート調査と歯科健診結果をデータとして使用した.1年以内の肺炎発症の有無を横断的分析のアウトカムとし,高齢者の全身状態および口腔状態との関連性について調べた.また,平成27年に受診した677名については縦断的分析を行った.

 横断研究における二項ロジスティック回帰分析では,肺炎発症に関わる口腔保健関連因子として,「飲み物がむせる」「口の渇き」「年に1回以上の定期歯科健診を受けていない」の項目との間に有意な関連性が認められた.また,縦断研究ではKaplan-Meier分析において,誤嚥性肺炎の発症に関連する因子として,「プラーク・食渣が中程度・多量」「4mm以上の歯周ポケットあり」の項目との間に有意な関連性を認めた.Cox比例ハザード分析により,感染性肺炎の発症に関連する因子として,「口の渇き」の項目との間に有意な関連性が認められた.

 これらの結果より,後期高齢者歯科健診受診者の肺炎発症に関わる口腔保健関連因子として,定期歯科健診に加えて,飲み物がむせることや口の渇きなどの口腔機能低下も関与することが示唆された.

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© 2024 一般社団法人 口腔衛生学会
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