2026 年 76 巻 2 号 p. 94-101
本研究は,1,450ppmFのフッ化物処理による脱灰エナメル質表面におけるフッ化カルシウムの形成が,歯の表面粗さに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
鏡面研磨したウシエナメル質を初期試料とし,24時間の脱灰処理後,1,450ppmFのフッ化ナトリウム溶液に3分間20回または60分間1回浸漬した.その後,水酸化カリウム溶液により歯面のアルカリ溶解性フッ素(フッ化カルシウム)を抽出し,抽出液中のフッ素量をフッ素イオン電極により定量した.さらに,各処理における表面粗さの変化を原子間力顕微鏡により評価した.なお,超純水に60分間浸漬した試料をControl群とした.
抽出されたフッ化カルシウム量は,Control群に対して,3分間20回群および60分間1回群で有意に高く,60分間1回群が最も高値であった.表面粗さに関して,脱灰による粗さの増加に対するフッ化物処理による粗さの減少の割合(平滑化率)を算出した結果,Control群(-2.6%)に対して3分間20回群(25.3%)および60分間1回群(40.0%)は有意に高値を示した.また,60分間1回群において,アルカリ抽出前後の表面粗さを比較した結果,アルカリ抽出後には表面粗さが有意に増加した.以上より,1,450ppmF相当のフッ化物は,脱灰したエナメル質表面にフッ化カルシウムを形成し,表面を平滑化することが示唆された.