2026 年 76 巻 3 号 p. 166-172
歯科医療の安全確保には院内感染対策が不可欠である.本研究では,飛沫拡散を可視化した教育用動画の有効性を評価し,感染対策意識と行動変容への影響を検証した.微粒子可視化システムで撮影した模擬的歯科診療時の映像を含む約20分間の教育用動画を作成し,歯科大学病院での感染対策研修において260名の歯科医師が視聴後のアンケートに回答した.動画台本はテキストマイニングにより分析し,「飛沫」「バキューム」「感染」などの語句が高頻度で出現し,教育的語群と実践的語群の関連が確認された.アンケート解析では,今後の使用意向が最も高かったのは口腔外バキューム(76.3%)であった.ロジスティック回帰分析では,口腔外バキュームを基準群とした場合,PPEや他の吸引装置のオッズ比は0.29(キャップ)から0.05(口腔内バキューム) の範囲であり,基準群との間に有意差が認められた.さらに,行動変容の間接指標として診療室の騒音を測定した結果,研修後に65dB超の騒音頻度が有意に増加し(p<0.05),口腔外バキューム使用頻度の増加が示唆された.以上より,模擬的歯科処置時の飛沫飛散映像を含む教育用動画を院内感染対策教材に用いることは,受講者の飛沫感染対策の意識を変化させ,歯科診療時の口腔外バキューム使用状況が改善した可能性がある.したがって,受講者の行動変容を伴う院内感染対策教育の効果が高くなる可能性が示唆された.