2026 年 76 巻 3 号 p. 173-181
本研究の目的は,日本全国の歯科診療所から75歳以上の後期高齢者に対する歯科医療サービスのアクセシビリティを,訪問歯科診療も含めた歯科診療所の潜在的な供給能力として指標を用いて評価するとともに,歯科受診率および歯科医療費との関連を検討することである.令和2年国勢調査75歳以上500mメッシュ人口データと国土数値情報2020年度医療機関データを用い,全国68,806件の歯科診療所を対象とした.ArcGIS Proを用いて,16km dAIRおよび15分tAIR-carを到達圏外人口割合として算出した.その結果,全国では75歳以上人口の2.27%が自動車15分圏外に居住しており,高知県・岩手県・和歌山県・秋田県など高齢化率が高く地形条件の厳しい地域で15分tAIR-carが高値を示した.また,15分tAIR-carは歯科受診率および歯科医療費と有意な負の相関を示し,地理的アクセスの低下が歯科医療サービス利用の抑制に関連する可能性が示された.本研究は,従来の距離指標では捉えにくかった実際の移動可能性を反映する指標として,高齢者歯科医療アクセスの実態を把握する一助となる可能性がある.