口腔衛生学会雑誌
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唾液過酸化酵素抗菌系のcariogenic Lactobacillus caseiに対する抗菌作用
森岡 俊夫北垣 次彦松村 敏治
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1970 年 20 巻 1 号 p. 100-104

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抄録

口腔の自然感染防禦機構の一つに唾液抗菌因子がある。最近, ロダンを必要とする唾液の抗乳酸菌因子の実態が唾液過酸化酵素であり, この抗菌系の活性発現には過酸化酵素, H2O2およびKSCN, の3成分が必要である事およびその作用機序等についても報告されている。しかしながら本抗菌系の生理的意義については未だ明らかにされていない。そこで口腔における細菌性疾患の代表である齲蝕に着目し, 本抗菌系と齲蝕との関係の解明に着手した。本研究はその基礎実験ともいうべきもので, Rosen等により既に無菌ラットを用いて齲蝕病原菌 (cariogenic bacteria) であると確認されたLactobacillus casei ATCC 4646を供試菌として本抗菌系の抗菌活性の有無を検索した。その結果SL Broth (pH. 5.4)中でのL. caseiの増殖は本抗菌系により著明に抑制される事, およびこの際の増殖抑制率から本抗菌系の活性は定量的に検定される事が観察された。他方, 供試菌は人唾液 (pH. 5.4) 中で本抗菌系により著明に殺菌された。これ等の結果は実験齲蝕の成立に本抗菌系がどの様な阻止効果を発揮するかを追究する上に重要な手掛りを与えるものである。

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