生後1ヵ月時の仔犬の下顎第1大臼歯と第4乳臼歯との中間根尖部近くに, 大きさのわかつているステンレス製画鋲形の標識体を下顎骨外側面上に差し込んだ。標識後常に頭部を定位置に固定できる台を用いて, 第1大臼歯が口腔内に萠出するまでの各過程を1ヵ月ごとに口外法でレントゲン撮影を行なつた。得られたレントゲンフィルムをtraceし, そのtrace上で標識体の実長値から, 歯牙長および歯牙根尖部から下顎骨下縁部の距離を測定換算した。その結果, 標識体の中心から根尖部の距離は, 経時的変動がみられなかつたが, 歯牙長と下顎骨下縁部はともに増大した。発育速度は歯牙の方が大きく, 特に2ヵ月以後著るしい。このことから歯牙長の増大と下顎骨下縁部の増量とは別々の因子が作用し成長していると思われた。また歯胚基底部で営まれている筈の歯牙の発育は下方に向わず, かえつてその位置より上方に向つているように観察され, この点でも下顎骨下縁部と歯槽部の作異が認められた。