ある集団の口腔健康管理は出来るだけ簡便で能率よく, しかもその成績が充分に役立ち, 効果が大きく, 経費も出来るだけ安価に行なわれねばならない。著者らは簡易な診査基準として, 口腔を単位とし, 歯, 咬み合わせ, 歯肉, 生え変わりの4項目について診査をした。それぞれの状態を普通, 要注, 要治に分け, さらにこれらの総合的な評価として, 各項目中の最悪の状態で被検者を表現した。すなわち各人に優 (健康), 良 (処置済み), 可 (要注), 不可 (要治) の何れかを与えた。不可には治療を, 可には精密検査を受けるよう勧告をした。この診査管理方法を昭和41年から3年間, 東京都内の歯科診療室のない事業所で実施し, その結果を歯科診療室のある2ヵ所の事業所口腔診査用紙から得られた成績と比較検討した。全体の被検者を口腔健康者群 (優と良), 口腔不健康者群 (可及び不可) とすれば, 昭和41年度において実験と対象事業所の間には有意差がなかつたが, 実験期間中に実験事業所の方に不健康者が健康となつた人が多く, その差は統計的に有意であつた。また口腔診査における処理能率も最良, 且つ補助者数は最少であつた。