口腔衛生学会雑誌
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蔗糖およびカラメル化蔗糖溶液による牛歯質からのCaの溶出増加について
大西 正男小菅 充子
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1970 年 20 巻 2 号 p. 180-183

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抄録

アルカリ性反応でカラメルを含むブドー糖溶液が歯質を褐色に着色した事実は, 糖によるCasaccharate形成能によつて理解されると考えられた。この現象を溶液中のCaとP量から観察したのがこの報告である。新鮮切歯のエナメル質及び象牙質粉末300mgを150mlのpH7.5Tris-buffer (B), モル蔗糖B溶液 (S), Sをオートクレーブしてカラメル化したもの (CS) にそれぞれ37℃で5日間浮遊した。溶液を歯質から分離し, 溶液中のCaとPを定量し, 残つた歯質粉末を同様に反復6回処理し, 毎回溶出されるCaとPを定量した。一般にCa: P値は溶出回数とともに大きくなるが, CS及びSのものが大きかつたので, Bに添加された蔗糖及びカラメルはアルカリ性溶液がCaを歯質から溶出する作用を増強していると解釈された。CaとPは溶出回数とともに減少し, これは歯質内に存在する可溶性Ca及びPの繰り返し抽出操作に似ていた。但し最初の操作でCaだけは異常に多く溶出された。Caに対する抽出力はCS>B>S, Pに対してはB>CS>Sの順序であつた。また, Ca: P比の異常に大きいこと, 一定でないことは生理的なアルカリ性溶液内でおこる歯質の変化に対する吾々の知識の不足を示していると思われた。

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