抄録
柄および植毛部の形態ならびに毛のかたさが異なる3種類の手用歯ブラシを用いて, 成人男子 (年齢20~28歳) に, 各人が日常行なつている歯みがき方法によって, 上顎ならびに下顎の前歯および左右側臼歯の唇・頬面ならびに舌面の合計6ブロック12歯面のそれぞれについて, 1歯面あたり20秒間ずつ刷掃させたときの, 歯みがき圧, 歯みがき動作の回数 (brushing stroke) および歯垢清掃効果率を測定した。
そして, 歯みがき圧と歯みがき動作の回数との関係ならびに歯垢清掃効果率と歯みがき圧および歯みがき動作の回数との相関性などから, 各歯みがき部位問の歯垢清掃効果の優劣や各歯ブラシの刷掃効果を検討し, つぎのような結論を得た。すなわち,
歯みがき圧 (200~1,000g) や歯みがき動作の回数 (30~100回/20秒) には, 歯ブラシの種類や歯みがき部位による差が認められるが, それよりも個人差のほうが大きい。このことは, 歯みがき動作に各個人の習慣や癖が付いていることを示すものである。
歯垢清掃効果が100%である被検者においては, 歯みがき圧は歯みがき動作の回数に逆比例するが, 歯垢清掃効果が100%でない被検者では, この逆比例関係は認められない。
歯垢清掃効果率は, 一般に歯みがき圧と歯みがき動作の回数との積に比例する。しかし, 上下顎前歯唇面や上下顎右側臼歯舌面の刷掃の場合には, この比例関係は認められない。前者では他のどの部位におけるよりも歯垢清掃効果はよく, 後者では悪い。このことは, 前者では他のどの部位よりも歯垢清掃効果があがりやすく, 後者においては効果のある刷掃をすることが困難であることに関係がある。
歯ブラシの種類により, 互いにその歯垢清掃効果が異なる歯みがき部位も認められる。すなわち, 上顎前歯および臼歯の唇・頬面の清掃効果はバネット型がもつともよく, 上下顎前歯舌面ではストレート型の清掃効果がもつともすぐれている。
以上の各実験成績から, 歯垢清掃効果率を歯みがき圧だけで表わすよりも, 歯みがき圧と歯みがき動作の回数との積で表現するほうが, 歯垢清掃効果の優劣をより明確に評価することができるばかりでなく, 歯垢清掃効果が劣っているのは, それが歯みがき圧に基因するのか, あるいは歯みがき動作の回数に原因しているのかを具体的に示すことができるので, この評価方法を歯みがき動作の指導に応用することが可能である。