口腔衛生学会雑誌
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フッ化物歯面塗布法におけるフッ素の口腔残留量と随伴症状について
塚田 満男岩倉 政城島田 義弘
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1981 年 31 巻 2 号 p. 151-157

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抄録
フッ化物歯面塗布に伴って口腔に残留するフッ素量の測定と塗布後の不快症状の有無を質問紙により調査した。研究対象は仙台市内の某歯科衛生士学院の女子学生44名で, 彼女らに2%NaF溶液と偽薬 (生理的食塩水) の歯面塗布を5日聞隔, 二重盲検法により相互実習させた。塗布はMuhlerの方法に準じて綿球で行い, 2mlの塗布液を使用させた。
塗布終了後に残液, 塗布に用いた綿球および防湿用綿花, 塗布中に排泄された唾液等を個別に集め, 各々の試料についてフッ素量をイオン電極法で測定した。その結果, 口腔に残留したフッ素量は平均1.83mg, 範囲は0.70~3.19mgであり, 体重1kg当り残留量は平均0.037mg, 範囲は0.013~0.067mgであった。質問紙は2日後に回収し, 不快症状を訴えた者については面接を行った。不快症状の発現頻度に関する質問紙による調査成績では2種の塗布液の間に統計学的有意差は認められなかった。不快症状の発現者群と非発現者群の体重1kg当り残留量の平均値を比較すると両群の間には差がなく, むしろ後者の値の方が高かった。不快症状の発現を回答した者の大多数は臨床実習における緊張と疲労を訴えていた。
以上から, 本実験において訴えられた不快症状は, フッ素の体内取り込みによる急性中毒とは考えにくく, 実習に伴う心理的, 肉体的ストレスにより惹起されたものであろう。
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