抄録
ダイオキシン類による生物汚染について文献調査を行ったところ, 極地に生息している生物にまで及ぶ地球規模の汚染が明らかとなった。汚染レベルは, 人間活動の活発な地域が高い傾向を示したが, 各種の規制・対策により, 世界全体ではおおむね低下傾向が見られていた。PCDD/DFの汚染源は農薬不純物, 塩素漂白, 焼却など様々であったが, 同一生息域の場合でも, 生物種ごとの食性, 取り込み, 代謝, 排泄などの要因により, 汚染レベル, 異性体・同族体組成が異なっていた。食物連鎖による生物濃縮は, 各生物の持つ異性体・同族体組成に対する生物濃縮性の差異を反映し, PCDD/DFのうち有害性の高い低塩素の2, 3, 7, 8-置換体に限り観察された。毒性が類似しているとしてダイオキシン類に加えられたCo-PCBは高い生物濃縮性を有することから, 魚類や魚食性生物などではPCDD/DF以上の高い汚染レベルが認められた。