日本肘関節学会雑誌
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Print ISSN : 1349-7324
Ⅳ.成人骨折・脱臼
鉤状突起の上腕骨への嵌入が整復阻害因子となった肘関節脱臼の1例
石垣 大介
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2016 年 23 巻 2 号 p. 190-192

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抄録

 鉤状突起が上腕骨小頭後面に陥入したことで徒手整復が不能となり,観血的整復を要した肘関節脱臼の1例を経験した.症例は46歳,女性.つまづいて左手をついて受傷した.骨折を伴わない後外側脱臼で,CTで鉤状突起が上腕骨小頭後面に陥入する所見を認めた.麻酔下の徒手整復が不能であったため,すぐに手術を行った.肘内外側を展開し,創内に指を入れて上腕骨と尺骨を直接把持して整復した後,断裂していた内側側副靱帯を修復した.術後は2週間の固定の後に可動域訓練を行い,良好な機能回復が得られた.骨折を伴わない肘関節脱臼は通常徒手整復が容易であるとされており,骨性の嵌入が整復阻害因子となった報告はない.本症例は外側側副靱帯を支点として前腕骨が内旋しつつ後方に脱臼する後内側回旋メカニズムにより受傷し,残存した外側支持機構の緊張により骨の嵌入が解除されなかったものと考えられた.

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© 2016 日本肘関節学会
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