2018 年 25 巻 2 号 p. 132-135
上腕骨内側顆骨折は極めてまれな外傷であり,特に成人例の報告は少ないが,われわれは,男性2例(74,84歳),女性3例(21,32,75歳)の成人例を経験した.受傷原因は,転倒3例,自転車事故1例,投球時1例であった.骨折線は,滑車溝または小頭滑車間溝付近から内側上顆近位に向かい,内側顆骨片は尺骨滑車切痕内に残ったまま橈尺骨とともに中枢に転位し,腕橈関節は1例は後方脱臼,4例は前方亜脱臼していた.治療は,内側進入1例,後方進入4例(うち肘頭骨切り3例)で観血的整復固定術が行われた.術後観察期間は5~23か月で全例骨癒合が得られ,肘関節自動可動域平均は,屈曲130°,伸展-15°であった.受傷機転は肘頭滑車切痕からの長軸方向の衝撃が主因と考えられた.成人上腕骨内側顆骨折は肘関節屈伸軸を構成する関節面の転位を生じ,かつ長軸方向に不安定なため,正確に整復し,強固に内固定する必要がある.