抄録
肘頭骨折に対する手術は鋼線締結法やプレート固定が一般的だが,鋼線トラブルや皮膚刺激症状が問題となる.我々は肘頭骨折に対しHCS(Depuy Synthes)を用いておりその手術成績について報告する.症例は10例で平均年齢71歳,骨折型はMayo分類TypeII A:5例,II B:3例,III B:2例であった.手術は骨折部を整復後,骨折型に応じ尺骨前方か後方の骨皮質を貫通するようHCSを2本挿入し,fiber wireによる8の字締結を追加した.結果は全例で骨癒合得られ,スクリュー挿入部の皮膚刺激症状は認めず,MEPSはexcellent:8例,good:2例あった.高齢者のType III Bの1例のみ,後方皮質を貫通したスクリュー先端部のルースニングと突出を認め抜釘した.本術式は侵襲も鋼線締結法と同等で,術後成績も良好で抜釘率も低かったことから,肘頭骨折に対する有用な治療法と考えられた.