抄録
60歳,男性,運転中のトラックが横転し,右上肢をドアと路面の間に挟まれて受傷した.肘窩部から手部にかけて高度な皮膚軟部組織損傷を認め,肘関節は後方脱臼し上腕骨遠位端は外側3分の2程度が欠損していた.受傷当日,デブリードマンを行い,骨セメントで骨欠損を補填して肘関節を整復した.上腕動脈,正中神経の修復も同時に行った.受傷後2か月で右腸骨自家骨移植と中間膜挿入関節形成術により肘関節を再建した.ヒンジ付き創外固定器を装着し肘関節屈伸訓練を行った.受傷後8か月で高位正中神経麻痺に対して腱移行術による運動機能再建を行った.受傷より約2年で肘関節可動域は伸展-20度・屈曲90度である.移植骨の吸収を認めるが疼痛や再脱臼・動揺性などの問題はない.