抄録
37歳男性が筋力トレーニングを契機に,利き手の左上腕に皮下出血,腫脹を生じ,上腕から肘の激痛の為夜間不眠が1週間続いた.その後,左示指・母指の自動屈曲不能に気づき,某大学病院血液科で軽症血友病B,整形外科では正中神経の部分麻痺の診断で,凝固製剤投与を続けるも麻痺は改善せず,当科を紹介された.製剤のみの保存治療で改善がないため,麻痺発症後4.5か月で神経剝離手術を行った.肘窩部で上腕二頭筋腱膜による絞扼があり,腱膜切開,神経剝離術を行ったが,神経周囲や神経幹内の血腫はなかった.術後2週には手指の自動屈曲が見られるようになり,最終診察の9か月後には母指・示指の先端に軽いしびれが残っていたが,筋力は正常で筋萎縮も消失し,肘・前腕の可動域も正常に回復した.